
前回までのあらすじ
平成元年、大学入学と同時に簿記に触れるが、脳が全く受け付けなかった。
なんとか自分を騙し、日商2級まで取得した。
平成三年、初めて挑んだ税理士試験だったが・・・
簿記論は合格したつもり
今振り返ってみれば、初めての簿記論の受験は散々な出来で、天地がひっくり返っても合格することはなかったであろうことは、容易にわかる。
多分、点数にして100点満点中数点しか取れていなかったのではないか。
否、下手をすると0点だったかも知れない。
私はしかし、この試験は受かっている態で、次へ進むこととしたのだ。
なぜなら本当に受かっていると思っていたからだ。
受ける前から難しい試験であると散々聞かされてきた。
そして実際受けてみたら聞いたとおり難しかった。
だから、こんなに難しいとは思ってなかった、ということはなく、思っていたとおり難しかっただけであった。
思ってた以上に難しかったら合格をあきらめたであろうが、思っていたとおりに難しかったので受かっていると思ったのだ。
どのくらい手応えがあれば合格かと云うことは全くわかっていなかった。
それぐらい、当時の私は試験に対して無知蒙昧な思考で居たのである。
舐めた選択
平成三年8月5日、水道橋のTACにて、次年度の講座申し込みをした。
そもそもが五科目パックの講座だったので、二年目は残りの三科目を自由に選ぶことができた。
簿記論は合格している態だから除き、申し込んだのは
・法人税法レギュラーコース
・財務諸表論上級コース
・消費税法速修コース
である。
ここで財務諸表論の「上級」に申し込んでしまっている点が、如何に税理士試験を舐めていたかを物語っている。
既に述べたように、財務諸表論は試験の一ヶ月前に受験をあきらめた。
簿記論に専念するためである。
上級コースとは、本試験を受けるレベルに達した者が、再受験のために選択するコースである。
私のように、本試験レベルにほど遠い者が、単に二年目だからと選択するものではない。
案の定、9月の開講後、一回目の講義を受けて全くついて行けないと感じ、初学者対象のレギュラーコースにすぐ変更した。
この期に及んで公認会計士に移り気
法人税法については、昼のコースと夜のコースがあり、それぞれ講師が異なっていた。
学生であった私は最初昼のコースを取ったが、新任の講師で、説明がわかりにくい上に毎度時間を延長するので辟易した。
ある日授業を休んだため、講義を録音したフォロー用カセットテープの貸し出しを受けた。
そのテープに吹き込まれていた授業は、夜担当のK作講師のものだったのだが、説明のわかりやすさに感動し、夜のコースに変更した。
ただし夜のコースは大教室に大人数の生徒で、そのほとんどが社会人だった。
私は昼間から時間があるので、いつも早めに教室に入り、かといって勉強するでもなく、司馬遼太郎の『関ヶ原』を読みふけっていた。
講義が始まる時間になると、仕事を終えた社会人受講生が大挙教室になだれ込んできた。
スーツを着た社会人に混ざって、ひとりラフなグリーンのスタジャンを着た大学生の私は、明らかに浮いていた。
会計事務所勤務らしい社会人生徒の会話が聞こえてくる。
「申告書はソフトで自動的に作れるんだけど、そこにどの数字を持ってくるかが難しいんだよ。」
ふうん、そんなものなのか、と思った。
そんな折、私はまたぞろ公認会計士に移り気だった。
そもそも税理士になりたいという動機がとても希薄だったのだ。
かといって公認会計士に絶対なりたいわけでもない。
しかし大学生協の書店である本を見つけ、税理士へのモチベーションが一気に湧いて出た。
大栄出版の『とりたい!! 税理士』という本だった。
その本で、自分のイメージとは全く異なる税理士像を知った。
(続く)
跋語
『西行花伝』/辻邦生/新潮社/令和8年4月16日(木)読了 ーーここ何年かのベストでした
『怪談 牡丹灯籠』/三遊亭円朝/岩波文庫/令和8年4月16日(木)読了
『逆説の日本史23 明治揺籃編』/井沢元彦/小学館文庫/令和8年4月21日(火)読了

