袖すり合うも他生の縁を実感しているよ

こんにちは!税理士をやっております向井です。最近トイレが近いよ。



一体この世に生きて気が合う友人と云うものはいかほど居ようか。
もしそういう人物がいればその縁は大事にしなければならぬし、またいったん縁が離れたとて巡り巡っていずれまた繋がる縁もあるものだと不思議なる思いに至った出来事をつづってみようかと思ふ。

アルバイトで知り合った甲氏

甲氏とは20代の半ばのころ、1カ月間だけの季節性のアルバイトで一緒になった。
アルバイト終了以来接点もなく全く連絡も無かったのだが、40代のある日偶然再会した。

アルバイトは体力的にきつい仕事であった。
ベルトコンベアーで流れてくる折箱におば様連中がお歳暮商品であるハムを詰め、最後尾で待つ我々男性アルバイトがそれを段ボール箱に入れる。そして折箱でいっぱいになってずっしりと重みを得た段ボール箱を上へ上へと積んでいく。

ベルトコンベアーは容赦なく、無機質に一定の速度を保って我々人間の労働を促し続けた。

労働者はそれを早朝から一日中続けることで夕方にはボロ雑巾のように疲弊し、ただただ毎日食する白米の量が増して行くのみであった。

しかし人間というものはどんな過酷な状況にあっても楽しみを見つけ出さなければ済まぬ生き物らしい。
我々は隙を見てはふざけあい、上品で美しいパートのおば様に叶わぬ想いを抱き、そしてまた重労働をねぎらい合った。

少しづつ、我々は団結力を強めていった。
肉体が疲弊するのと比例するように、絆が生まれていった。

4人居た同世代の男性アルバイトの中でも、甲氏は際だった社交家で朗らかな人柄を有し、博覧強記でいかな話題にも当意即妙に応えることのできる特異なる人物であった。

甲氏のおかげで、ベルトコンベアーが2台配置されただだっ広い倉庫は思いのほか楽しい空間と化した。
労働者が疲労をしばし忘れ去るため、甲氏の果たした貢献は多大であった。


約1カ月の労働が終わり、数十人のおばさまパートと4人の若者は解散した。

どうしてだか、お互いの連絡先を知らせ合うこともなしに。



3割の人に出合ったとき


数学者の森毅さんがかつて云っておられたことである。



3割でええのや。
無駄な7割がなければ3割もない。
10割やらなあかんというのはおかしい。
人間の一生そんなに無駄なしではいかへん。
7、8割の無駄がないと人間、生涯残るものはない。
無駄でええのや。
高校に100人おって2、3割気が合うやつがおる。
嫁はんの兄弟とか、会社で隣に座っとるやつとか、そういうやつらだけは努力してええとこ見つけたら絶対自分の得になる。
それ以外は2、3割でええ。




そこで私はこう思うのだ。
気の合う3割の人間にもし出合ったのなら、その縁は大切にしなければならないと。


アルバイトが解散して約20年を経て、私はひょんなことから偶然にも甲氏と再会した。
その後今に至るまで付き合いは続いている。
甲氏はその3割の人物だったのだ、と思う。





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