こんにちは!税理士をやっております向井です。神保町の三省堂書店に1日籠もりたい・・・。
運の巡り合わせとはかくも滑稽なストオリイを紡ぎ出すものかは。
其れ怠惰なる者には幸運の気配は近づき難し。
然るにわが苦々しい記憶の回想を試みよう。
事件が起こったのは大雨の夜であった。
1990年代初頭の夏、大学生だった私は実家に帰省していた。
関東、関西、中部圏の大学にちりぢりになっていた友人らも同様に帰省していて、我らは何の目的もなく毎晩集まっては若いエネルギーを無駄に放電していた。
閑と余力をもて余していた。それも過剰にもて余していた。
言いかえれば、意欲的に取り組むべき対象がなにもなかったということだ。
これはこれで、ある意味不幸なことであろう。
我々は堕落の極みにあった。
そんなある日、神戸に下宿している友人に会いに行こう、明日、車で、ということになった。
その友人に電話すると快諾で、しかも神戸で知り合った女子高生何人かと一緒に遊ぼうということになった。
これは欣快の至り!我ら冴えない男どもはいきり立った。
そして当日。
CoCo壱番屋で食事を終えた18時頃、大雨の降る中を我らは車に乗り込み、M県M市からいざ神戸へと向かった。
20歳そこそこのギラギラした男3人は、テンションがはち切れんばかりに上がっている。
当時放送されていた、ソフト99のTVコマーシャルぐらいテンションが上がっている。
・・・説明しよう。
クルマの窓に吹き付けると、拭き取りいらずで撥水効果があるという液剤のCMの中で、女性がデモンストレーションを行い、こう言うのである。
「拭き取り、ノーノー!!」
特に「ノーノー!!」のところで声のトーンを二段階ほど上げ、甲高く叫ぶのだ。
運転手の私は、助手席に座ったS君に、グローブボックスにティッシュが入っているかどうかを尋ねた。
S君はフタを開けてティッシュがないのを確認すると、ソフト99のCMの女性ばりに
「ノーノー!!」
と甲高く叫んだ。
車内の舞い上がり加減をわかっていただけようか。
そんな我々の前途を暗示するような大雨の中、我々はクルマを走らせていた。
特異なるネーミング手法
平成の初めごろ、当時若手芸人だったダウンタウンの番組でのことだ。
より若手の今田耕司氏、山崎邦正氏ら数人にダウンタウンが何か指令を出し、それを面白おかしくやるという企画があった。
その若手達を紹介するときに、まだそれほど売れていない彼らを揶揄して松ちゃんが
「マネージャーいないーズの皆さんです」
という蔑称で紹介し、その侮辱に対してやいのやいの言う若手にかぶせて
「電話して自分で(スケジュールを)聞きーズ」
とさらに屈辱的なネーミングで追い打ちをかけた。
私はそのネーミング手法にいたく感銘を受けた。
なんと無理矢理で、少し恥ずかしい裏事情の暴露を含んだ、特異な手法ではないか。
私はこの手法を覚えておいて、どこかで使おうと脳内にストックしていた。
それをまさか己自身を卑下することに使おうとは・・・。
不本意ながら、ウンナイーズ(運無いーズ)結成
大雨で神戸への交通は難渋した。
予定より到着が遅れる旨、途中の公衆電話から神戸で待つ友人の下宿宛てに電話をかけた。
電話の向こうの声が暗い。
いやな予感が全身によぎる。
女子高生のひとりが外階段を滑って捻挫し、来られなくなった。ついては今夜の会も無くなった、と。
私は階段を滑りやすく濡らしたこの雨に激しく憤った。
なんたる仕打ち!
神よ、このような巡り合わせがありましょうか⁈
意気消沈しつつも一縷の望みをかけて我々は神戸に向かい、通常ならば3時間の道のりを5時間かけてたどり着いた。
しかし想像していた桃源郷はもちろんそこになく、狭いうえに散らかった友人の下宿の一室は、ものぐさな腐れ男子達の流刑地と化した。
結局のところ、我々は200kmの道のりを経た神戸まで来て、地元にいるのと変わりない時間を過ごした。
つまり、怠惰な男子学生が無駄なエネルギーを持て余すだけの時間が、一晩続いたのである。
だらだらと話し込んでろくに眠らずに朝を迎え、部屋の主を加えた4人は前日の大雨が嘘のように晴れ上がった晩夏の青空の下、交代で運転しながら地元M県M市へ戻った。
私は心身ともに疲れ果て、後部座席で眠り込んだ。
S君は私のそのくたびれた姿を見て「蜘蛛の死骸のよう」と評した。
その後も度々、我々は意気込んでは失望するという空回りを繰り返し、どうも運に見放されているぞ、ということに気づき始めた。
だらだら過ごしているクセに幸運に巡り合おうという虫のいい考え方は、神様はお好きではないようだ。
私は松ちゃんの手法を拝借し、この不運な男どもを総称してウンナイーズと名付けた。
ウンナイーズはその後数年、活動を続けたということだ。
完
◆◆最近の未知との遭遇◆◆
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