貸借対照表は”すごく便利なメモ帳”
新規の顧問先さん、つまり
ほかの税理士事務所から移ってきた法人、個人事業主の方には、
過去の申告書を必ず見せてもらうようにお願いしています(当然ですが)。
特に自分で経理をされていた個人事業主の方は、
貸借対照表がきちんと作れていないことが多いです。
貸借対照表が作れていないと、やっかいなことになります。
貸借対照表の不備は、
その年だけでは終わりません。
貸借対照表がいいかげんだと、
翌年以降の損益計算書まで影響されてしまいます。
ひいては、普段の経理や、確定申告がとても難しくなってしまいます。
貸借対照表は、翌年の経理のための、
”便利なメモ帳”
と言えます。
きちんと作ってあると忘れ止めにとても有効で、
翌年の経理処理や確定申告もとてもスムーズに進むでしょう。
貸借対照表の正確性を見れば、
どの程度きちんと経理をやってきたかがすぐわかります。
経営状態をきちんと把握するなら貸借対照表を正確に作る必要がある
貸借対照表は忘れ止めのための便利なメモ帳である、と書きました。
では一体、何をメモしているのか?
そもそもなぜ忘れ止めのメモをしておく必要があるのか?
それはズバリ、
お金の動きと、モノの動きがズレるから
です。
クレジットカードで買い物をすれば、
商品がすぐ手に入り、支払いは何日か後になります。
モノ(商品)と、お金の動きがズレるわけです。
ところで、
もうけを計算するのは、
貸借対照表ではなく、
損益計算書の役割です。
損益計算書は、
厳密にはお金の動きではなく、モノ(サービス)の動きを記録します。
このことを専門用語で
”発生主義”
と呼びます。
この発生主義に従う限り、
損益計算書を見ても、お金がいくら残っているのかはわかりません。
お金がいくら残っていて、
将来いくら入ってきて、いくら出ていくか?
それを記録しているのが貸借対照表です。
このメモをしておかないと、
次の年のもうけを計算するときに困ることになります。
モノの動きはもう去年に終わっているのに、
お金だけが今年動く(またはその逆)
ということが、日常の取引では普通に起こります。
そうすると去年の備忘記録がないと、
今年どうやって処理してよいかがわからなくなってしまいます。
損益計算書は作ってもその年限りで、毎年新しく作りなおします。
一方で貸借対照表は、前年の残高を繰り越して足し引きしていきます。
その足し引きが実は、損益計算書にも影響してきます。
貸借対照表は、
前年と次の年をつなぐ”連結管”です。
複式簿記がこれを可能にしています。
ここの処理の正確さの度合いがそのまま、
経営数値の正確さに直結します。
貸借対照表がいい加減だと経営数値もいい加減なものとなってしまいます。
専門家にアドバイスを求めよう
複式簿記でデータを記録し、
正確な貸借対照表をつくる、
これはおそらく一般の方には少し荷が重いと思います。
専門的な知識が必ず絡んできますので。
クラウド会計ソフトを導入しただけではなかなか難しいでしょう。
税理士の力を借りてください。
その場合でも、丸投げはせずに、助言を聞きながら自ら作成するのがベターです。
丸投げしてしまうと数値の感覚は身につきにくいと思います。
あるいは作ったものをチェックしてもらうとよいでしょう。