データをただ入れただけでは試算表は完成しないのはなぜか?

会計の入口

リアルタイムで試算表できますか?否、できません・・・

とある顧問先でのこと。
「試算表の提出をリアルタイムでできないか?」
と金融機関に問われた、と相談を受けた。

この場合の”リアルタイム”の意味はおそらく、
その月の試算表をその月末に出せないか?
ぐらいのことだろうか。

不完全なものならいくらでも出せる。
しかし、正確性をある程度担保するなら、難しい話だ。



IT技術による省力化により、試算表の完成は早まったか?
と言えば、確かに早まった。
データを全て手動で入力していた頃に比べれば。

クラウド会計ソフトによるデータ連動、
また、Excelなどでデータを作成しておき、CSVファイルを会計ソフトに取り込む、
など。

では、クラウド会計ソフトさえ導入すれば面倒な入力作業から全て解放され、試算表の自動作成ができるのだろうか?

結論として、いまだ茨の道、というのが今現在(2024年2月時点)の実感である。

クラウド会計ソフトは確かに便利だ。
しかし過剰な期待がされている向きもある。


先の金融機関の発言につき、
1からデータを作っていく側と、
できあがったものをただ見るだけの側
とのギャップを非常に感じた次第である。

貸借対照表のつじつま合わせは地獄

クラウド会計ソフトを使ったところでまだまだリアルタイムにはほど遠い、ということを書いた。

とはいえ、「単式簿記」で損益を出すだけならそんなに難しくない。
要は家計簿と同じで、収入と支出が分かれば良い。
現預金の動きだけに注目し、計算すれば結果が出る。

しかし、単式簿記では正確な業績は把握できない。
文豪ゲーテが賞賛した「複式簿記」でなければならない。

その複式簿記の中で、時間がかかるのは貸借対照表の調整なのだ。
貸借対照表には、データの処理のどこかが間違っていることをアラートする機能がある。
貸借対照表=つじつまが合わないことを発見できる装置
なのである。

そして実務においては、つじつまが合わないことは多発する。
つまり、データの、何かが間違っているのである。

データ誤りの原因を究明し、訂正することの苦労は、会計事務所での下積みを経験した税理士なら痛いほど分かるはずだ。

たとえ間違いの箇所が分かったとて、原因がすぐわかるわけではない。
時には帳票を紙もしくはCSVなどのデータに別途抽出し、ほかのデータや証憑とにらめっこが続いたり。
会社の担当者が前月のデータを悪気なしに訂正変更していたりすると、なかなか原因が見つからないこともある。

複数の誤りが絡んでいる場合も地獄だ。
絡まった糸を順番に解きほぐしていかねばならならず、
膨大な時間が費やされかねない。

会社の担当者に質問しても当を得ない回答が返ってくるのは日常茶飯事。
別に責めているわけではなく、複式簿記という共通言語がないのだからしょうがない。
その回答から想像力を駆使し、データの状態を推測する。

肩は凝る、目は疲れる、脳はヒートアップする、イライラは募り神経はすり減る。
そのうえに、整理されていない証憑書類をどさっと渡された日には、もうやる気が失せる。
そうなると働き方改革などくそ食らえだ。

銀行のデータだけでは試算表はできない

銀行のデータが自動連携されているのだから、試算表はすぐにできるはず。
というのは全くの誤解だ。

銀行データだけでできるのは、先に説明した、単式簿記の家計簿レベルのものにすぎない。

これを補うために、”振替仕訳”なるデータを作成し、
何らかの形で会計ソフトに反映させる必要がある。

振替仕訳の量は会社の規模や業態によって異なるが、
複式簿記の知識が欠かせない上に、つじつま合わせを十分考慮して作成しなければならない。
クラウド会計ソフトにこの作業を任せることはできない。

会計ソフトが進化しようが、今のところ人為的に手を入れなければ完全な財務諸表はできないと断言する。
ウェブ上のデータ連係だけで「はいおしまい」というわけにはいかないのである。

税理士事務所は頑張っている

というわけで、
世の税理士事務所は頑張って仕事しています。
リアルタイムに試算表が作れないのは、サボっているからではございません・・・

会計ソフトはまだまだ発展途上。
どうか過剰な期待は禁物と心得ていただき、
「試算表、もっと早くできねえのか!」
と曰わずに、上述のような苦労があることをお知りおき下さいませ。


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