決算書を読める社長になるために必要な前提知識、まずはこれ

社長との会話で思うこと

税務・会計の業界にたずさわって、はや幾年。

決算書、試算表といった”財務諸表”について、数多くの経営者(社長)、経理担当者の方と話してきた。

そこでいつも思うことは、
経営者にとって最低限必要な会計知識が存在するのに、
その知識は経営者の方にあまり知られていない
ということである。


また、経営者の方(あるいは職業会計人以外の一般の方)がわからないポイントというものが、だいたい共通していて、いくつかに集約されることにも気づいてきた。

そしてそれが職業会計人と、それ以外の人を隔てる障壁となっていて、財務諸表が根本からわからない、大きな理由のひとつになっていると思うに至った。

例えば、次のような会話

社長「この商品はもう売り渡して、11月入金予定です」

税理士「入金は11月なんですね」

社長「そう、だから9月決算の売上には入らないんでしょう?」

税理士「商品を引き渡したのはいつですか?」

社長「商品は9月に渡してるのに、すぐ払ってくれないんだよね~。でも11月には入金しますよ」

税理士「社長、それ9月の売上に入れなくてはなりませんよ」

社長「え?・・・お金もらってないのに税金だけかかるの??」

この会話のポイントが”発生主義”と呼ばれるもので、財務諸表を読むための前提となる、必須の知識である。

発生主義は、現金そのものの動きではなく、価値の動きに着目して取引を認識するという考え方だ。

上の例でいえば、商品を引き渡した時点で収入が計上され、法人税(あるいは所得税)の課税の対象となるということである。

代金は未回収だが、商品の引き渡しの事実をもって収入となるため、未収でも課税される

大まかに説明してしまえば上述の通りで、発生主義、と漢字四文字で書くと何やら小難しそうに思えるが、まったくそんなことはなく、少し視点を変えるだけの話なのである。


発生主義を知らないと経営数値を見誤ることも

発生主義の対になる言葉が
”現金主義”
で、現金の動きだけに着目して取引を記録していくという考え方である。

会計や税法の世界では、(例外はあるものの)現金主義は認められず、発生主義がほぼ強制的に要請されている。

そして当然、財務諸表は発生主義を前提として作成されている。

先ほどの例のように、発生主義を無視して現金だけで会社の数値を把握してしまうと、利益や納税額を見誤る可能性がある。

だから、経営者の方は自分の頭の中のどんぶり勘定、または資金繰りとは別に、発生主義の考え方を理解しておくべきだろう。

さらに、発生主義がわかってしまえば、決算で在庫を数えなければならない理由や、なにより「貸借対照表」の存在理由がよくわかると思う。





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