決算書を読める社長になるために~その2~BSとPLだけをもっとシンプルに捉えよう

構造が分からないと圧倒される。だからまず構造を知ろう

私が初めて勤務した税理士事務所では、毎月の試算表を郵送していた。

某・T計算センターの用語で、毎月の「巡回監査」(この用語は上から目線な印象で好きではないのだが!)というものが終わると、

事務所から打ち込んだデータをその計算センターに伝送し、折り返し大量の紙の試算表が郵送されてくる。

その、ミシン目でつながれた試算表を、職員で手分けしてビリビリと手で切り離して分類し、各顧問先へ袋詰めして郵送していた。

その試算表には罫線が緻密に引かれ、主要な数字のほかに、様々な経営指標が表示されている。

顧問先を訪問すると、ごくたまにではあるが、その帳票の見方を教えてくれと求められた。

「わし、これの見方が全然わからん。教えて」と。

30年前、駆け出しだった私は、一太郎を駆使してBS、PLの構造を図解し、その図を指し示しながら説明したが、暖簾に手押しで、まったく手応えのない反応しかいただけなかった。

まず、相手が何が分かっていないかを私が分かっていなかったということもあるが、その罫線と数字だらけの帳票と、私の作ったシンプル図が結びつかなかったのではないか、とも思う。

またあるときは、取引先の調査票に数値を記入しなければならないが、決算書のどの数字を持ってくればいいのかがさっぱり分からない、と助けを求められた。

つまり、税理士事務所から提出される試算表が、その役割を果たしきれていないのではないか。

税理士が試算表の説明をするのは当然として、
微に入り細をうがつ説明の前に、大まかな構造をこそまず理解してもらうように説明すべきだ、というのが私の持論だ。

まずは財務諸表の種類と意味、大事なこととそうでないことを分けて、基礎と骨組みを理解すべきであり、そこをすっ飛ばすと、ただただ数字の羅列と意味の分からない名前の帳票群に圧倒され続けるだろう。

要するにもっとシンプルに捉えようぜ!ってこと。

複雑にみえる原因はなんだろうか?

表の種類が多すぎ問題

先に述べたように、問題は”複雑すぎる”こと。

まず第一に、表が何種類もある。

法人税の申告書と決算書を例に取ると、


法人税申告書別表(これだけでもサブタイトルがいくつも出てくる)
貸借対照表
損益計算書
販売費及び一般管理費明細
製造原価報告書
株主資本等変動計算書
勘定科目明細書(これも枚数が多くなりがち)
法人事業概況説明書
etc・・・


このなかから必要な情報を取り出すのは、よほど慣れた人でなければ難しい。

目的に応じて大事なところだけを見ればOKなのだが、このように羅列されると気持ちが萎えるのも無理はない。

主従が分からない問題

上記の表は、それぞれが等価なわけではなく、主たる表と、そこから派生した従たる表がある。

その主従がわかっていないと混乱する。

「複式簿記は人類最高の発明のひとつ」
とは、ゲーテが言った言葉らしい。

会計データはほぼ全て複式簿記で作成されている。
その結果を集計したものが、
貸借対照表と
損益計算書
である。

この2枚が基本中の基本(主)であり、ほかの表はすべてここから派生したもの(従)であると言っても過言ではない。

縦に並んでしまっている問題

会計ソフトで試算表を表示する(または印刷する)と、貸借対照表も損益計算書も縦並びで表示される。

これが各表の理解を妨げる一因になっている。

会計データは複式簿記で作られるため、左右対称の表になっており、特に貸借対照表は2列に表示しないと意味がわかりにくい。

また、会計ソフトによっては損益計算書と製造原価報告書が、区切りなく縦1枚で表示されるものもあり、見る方に誤解を与えたり、数字を探すのに余計な労力を要したりする。
これはソフトの欠陥というほかない。

各表の意味が分からない問題

損益計算書はまだよいとして、
貸借対照表の存在意義がわかりにくい。

発生主義やゴーイングコンサーンなどの前提知識がないと真に理解することは難しいと思われる。

最低限の知識として、

左側(借方)は資金の運用状態、
右側(貸方)は資金の調達源泉

ということを知っておくと理解が進むかもしれない。

また、最低限の用語として
貸借対照表 = バランスシート(Balance sheet)= BS
損益計算書 = Profit and Loss Statement = PL
BS、PLという略語は知っておくべきと思う。

BSとPL、実は1枚の表

貸借対照表と損益計算書はそもそも一つの表である。

それを一定のルールに従い、2つの表に分類している。

もっと突き詰めて、

貸借対照表の中に損益計算書は内包されている

といってもいい。

だから究極的には貸借対照表が全てを表しており、
(主)貸借対照表
(従)損益計算書
とも言える。

(このあたりの考え方は時代背景や学説によって異なるが)

貸借対照表の意味は分からないに決まっている!

持論だが、
BSの理解こそが要!
と考えている。

私は、大学1年生の時に日商簿記3級から始めたが、
貸借対照表の意味がわからず、ずいぶん長い期間、悶々としたものを抱え、さまよったものだ。

当時(平成元年ごろ)はインターネットもなく、初心者にやさしい書籍も少なく、結局は税理士試験の財務諸表論という科目を勉強するまで解決しなかった。

だから一般の人が貸借対照表を理解できないのは当たり前なので、経営者の方はどんどん税理士を質問攻めにしてよいと思う。

まとめ

財務諸表を理解するため、構造をシンプルに捉えようという観点から述べてみた。


弊所のお客様には、今回述べたようなことを、私が作成したオリジナル図を元に、根本から理解していただけるようにご説明しています。

取引先や金融機関に提出する調査票なども、ご自身で書けるようになっていただいております。
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経営者の方はぜひ税理士を活用しようぜ!




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